白紙の計画書

自己表現欲求と照れの狭間にいます

「誰か機会を作ってくれ」というワガママ

 近い未来に就活やら何やらで、大学4年間で(いま5年目)何に一番打ち込んだかと問われたとき、僕は多分言葉に詰まる。
 そういった場で提示してウケがよさそうなIFIAMはハナから腰掛けのつもりで参加していざ真剣になれそうだと思った頃には忙しくて顔を出しにくくなったし、学業は他人より時間をかけたけれど時間をかけた以上のことはない。
 バイトはあれこれやってきたけども、今の職場以前のところはいろんな不協和で投げ出してきた。
 最も時間を使ったコミュニティは放送部だとは思うけれども、かと言って放送部の活動に時間を使ったかと言われるとそこはイコールでなく、大半の時間は部室で麻雀やスマブラ遊戯王をして遊んでいたし、まだ遊ぶつもりだ。

 

 ここまで考えて、「いや、瞬間最大風速なら」と思い至る。ラジオドラマ作りだ。

 

 
 うちの放送部はラジオドラマに偏重しており、年に二回の地区大会(近所の大学たかだか4つで寄り集まってなんとなく馴れ合いで順位をつけて酒を飲む交流会)への参加が部全体としてマストとなっている。

 

 

補足。
 もちろん大学の放送部界隈には、Nコンというハレの全国大会であったり、最近ではNHKの主催する"ラジプロ"という総合格闘技みたいな*1大会だったりと、もっとオープンで全国的なコンテストがそれなりに存在する。
 が、これらの大きな(公的な)大会だと、作品に使うBGMや効果音などをきちんと著作権処理しないといけないという煩わしさ・金銭コストの問題から、私的利用と言い張れるクローズでローカルな大会の方が作品作りの自由度が高く制作陣に求められる意欲のハードルも低い。

 そんな土壌で、僕も都合6本のラジオドラマ制作に関わってきた。確か部内大会に1本、Nコンに1本、地区大会に4本だったと思う。さすがに年に2本ペースを3年間続けるとそれなりにノウハウが掴めてきて自信もつき、それなりの実績(馴れ合いの地区大会レベルで)も積めた。僕は積極的に作りたがったわけではないのだが、毎回ありがたいことに脚本を書いた部員から声をかけられて、技術スタッフとして制作に参加したわけである。

 どんなことをやったかザックリ説明すれば、セリフのボリュームや間を調整したり、エフェクトかけたり、BGMや効果音を気持ち良い感じに乗っけたりといった、キャストの読んだままの音に要素を足して足して足して、脚本家のイメージする音に近づけるという作業だ。
 最初こそ何をやればいいのか分からずに言われたとおりに手とマウスを動かすことで精一杯だったが、何本目のドラマからか、自分発のアイディアを(音として実装した上で)周囲に提案できるようになってきた。
 ラジオドラマの演出技術なんて大学入学当初は全く興味もなかったのに、いつの間にか他の作品を聞いてテクニックを吸収しようだなんて目論んだり、他大学の作品を聞いて「俺ならこうする」「そうじゃない、こうだろ」なんて部員と論じたりもした。どっぷりである。

 

 なるほど、僕が大学生活で最も打ち込んだことはラジオドラマ制作なのか。ここまで指を動かしてようやく確信できた。

 そうそう、僕は大学生活でラジオドラマ制作に非常に熱心に取り組んだのである。(馴れ合いの地区大会レベルでは)ラジオドラマの演出技術は極めたと自負している。

 


 ……「僕はいままで、これを頑張ってきたのだけど」と、さも自分がその分野の第一人者であるかのごとく"頑張ってきたもの"を示すのがこっ恥ずかしかったから、わざとオチャラケるために前段までダラダラと1300字も書いてきてしまった。
 ラジオドラマ制作を頑張った、その演出技術にはちょっとした自信がある。最初からそう書けよ面倒くさい。

 具体的にどれくらいのコダワリをもって今まで制作に携わってきたか。BGMの拍とセリフの入りのマッチングだとか、音の高低と音源の上下位置だとか、体重移動を意識した足音だとか、挙げればキリがない。伝わっていたか・客観的に効果が出ていたかまでは分からない。コダワッていた当時は、少なくとも主観的には効果があったように思うけれど。
 過去に作った作品を今あらためて聞き直してみると、確かに最近作った作品のほうが演出・技術ともに洗練されているように感じるので、僕はそれを根拠にラジオドラマに関してだけは自分の成長を信じていて、今でもたまに後輩の作品に偉そうなアドバイスをぶつけたりしている。



 最後にラジオドラマを作ったのがちょうど一年前なので色々思い出した。
 書いたとおり、僕は井の中の蛙なりに技術を極めたと思っている(大海に出るつもりは無い)。けれど、ラジオドラマで育ててきたノウハウがどこまで通用するものなのか、最近気になることが多い。アニメとかドラマとか、映像作品に添える音作りをやってみたいなぁと思うのだけど、なかなかどうして機会がない。
 ラジオドラマは、勝手に脚本家が誘ってくれたからラクだったのだなあ。

 

 

*1:5分のラジオ番組であれば一切のジャンルを問わない、大学放送部の無差別級コンテストである。ちなみにNコンはラジオドラマの他にアナウンスだとか朗読だとか映像ドラマだとかの様々な部門に分かれている。